人が辞めるのは給料のせい?スタッフが定着しない会社の共通点

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人が辞めるのは給料のせい?スタッフが定着しない会社の共通点

皆さん、こんにちは。
長崎県佐世保市で経営コンサルタントをしております、翔彩サポート代表の広瀬です。

最近、こんなお悩みを抱えていませんか?

「せっかく育てたスタッフが、気がつくと辞めている」
「給料を上げれば辞めないと思って頑張ったけど、それでも辞める人が出てくる」
「うちは給料が安いからダメなんだろうか…?」

私は、これまで多くの中小企業の経営者の方々とお話をしてきましたが、こうした声を聞かない日はありません。スタッフの採用が難しいのはもちろん、ようやく採用できた人材が数ヶ月で辞めてしまう状況が続けば、経営の足腰がどんどん弱っていくのは当然です。

では、「給与を上げれば人は辞めなくなる」のか?
答えは、一概にイエスとは言えません。

もちろん、給与は働く上で大切な要素ですが、それがすべてではないのです。私が実際に支援してきた企業の現場では、給与条件に納得して入社してきたにもかかわらず、「人間関係」「職場の雰囲気」「達成感のなさ」といった別の要因で離職してしまうケースがほとんどでした。

つまり、スタッフが辞める本当の理由は、給与以外のところにある可能性が高いということです。
逆に言えば、給与を上げなくても、「働きがい」や「心理的安全性」「成長実感」を丁寧に設計すれば、スタッフの定着率は大きく改善されます。

この記事では、スタッフが定着しないと悩む経営者のリアルな声や給与以外で人が辞めてしまう会社の共通点などについて解説します。「どうしてうちの会社は定着しないのか…」と悩んでいる方にこそ、ぜひ最後までお読みいただきたい内容です。

弊社は、初回の無料カウンセリングを実施していますので、お気軽にご相談ください。


給与は本当に定着に関係しているのか?

まず初めに、経営者として押さえておきたい大前提があります。

それは、「多くの従業員は給与や賞与といった待遇面を十分に理解・納得したうえで入社している」という事実です。求人情報を見て、面接で条件を確認し、最終的に「これで働こう」と自分で決めて入っているわけです。

では、なぜそれでも辞めるのでしょうか?

その背景を2つの視点から考えたいと思います。

  • スタッフが辞める理由は「給与」よりも「職場体験」にある
  • 給与よりも重視される「働きがい」「人間関係」「成長機会」

それぞれの具体的な内容は以下のとおりです。

スタッフが辞める理由は「給与」よりも「職場体験」にある

スタート地点では給与に大きな不満があるわけではないのにもかかわらず、数ヶ月〜1年ほどで退職してしまうのはなぜなのでしょうか?その背景には、実際に働いてみて感じる「心理的なギャップ」があります。

たとえば、「活気ある職場だと思っていたのに、実際は会話が少なくて孤独を感じる」「丁寧に教えてもらえると思ったのに、実際は放置気味で何をすればいいのかわからない」といったケースです。人間関係にストレスを感じたり、「この職場では成長できない」と感じてしまったりすることも、スタッフの心を静かに離れさせていきます。

このような職場体験の“ズレ”が、モチベーションの低下や不安の蓄積につながり、「辞めようかな…」という決断を後押しするのです。ここで経営者が誤解しがちなのは、「辞めた理由=給与が低かったから」と捉えてしまうことです。

しかし実際には、そうした金銭面の問題は“最後の一押し”であることが多く、主因は「働きづらさ」「孤独感」「成長実感の欠如」といった日常の中にある心理的要因です。

給与よりも重視される「働きがい」「人間関係」「成長機会」

スタッフが辞めるか、定着するか。その大きな分かれ道となるのは、給与の金額よりも、「自分がこの職場でどんな体験をしているか」という点にあります。人は、お金以上に「自分が大切にされていると感じるか」「仕事にやりがいを持てているか」「成長している実感があるか」によって、会社へのロイヤリティを築いていきます。

「この仕事、意外と面白いな」
「昨日できなかったことが今日はできるようになった」
そんな小さな成功体験の積み重ねが、働く意欲と自信を育みます。

だからこそ、入社直後にいきなり難易度の高い業務を任せてしまうのではなく、まずは小さな成功体験を積ませることが重要です。初期段階でつまずき、自信を失えば、離職リスクは一気に高まります。

また、上司や経営者がスタッフの成長を見守り、必要なときには「最後の尻拭いは自分がやる」という覚悟を見せることで、スタッフは安心して挑戦できるようになります。そうして「この職場は、自分が成長できる場所だ」と感じたとき、人は長くそこにとどまろうとするのです。

一方で、評価されない、話を聞いてもらえない、相談しにくい雰囲気があると、どんなに給与が良くても人は辞めてしまいます。「給与が低いせいだ」と短絡的に考えるのではなく、スタッフが何を感じ、何を求めているのかを丁寧に観察する必要があります。


スタッフが定着しない会社の特徴とは?

私がこれまで数多くの企業の現場に入り、経営者と向き合ってきた中で、スタッフが長く定着しづらい会社には、いくつか共通した傾向があることに気づきました。

  • 入社時の教育やフォローが雑・不十分
  • 指示・命令型のトップダウン文化が根付いている
  • フィードバックや感謝の言葉がない職場環境
  • 成長の機会がない、毎日が“変わらない日常”である

それぞれの具体的な内容は以下のとおりです。

入社時の教育やフォローが雑・不十分

新しく入ってきたスタッフに対して、「見て覚えてくれ」「最初は誰でも大変だから頑張って」という姿勢だけで放置してしまう企業も少なくありません。こうした“ぶっつけ本番”のような対応は、離職を加速させる大きな要因となります。

人は初めての環境では不安と緊張でいっぱいです。そんな中、十分な説明もなく業務を任され、うまくいかずに叱責されてしまえば、「ここではやっていけない」と感じてしまっても無理はありません。

特に、最初の3ヶ月間は“定着のカギ”ともいえる重要な時期です。この間に「この職場は安心できる」「成長できる」「自分は受け入れられている」という実感を持たせることができるかどうかが、長期的な定着につながります。そのためには、業務マニュアルの整備やOJT体制の見直し、メンター制度の導入など、入社後のフォローアップ体制を丁寧に整えることが不可欠です。

指示・命令型のトップダウン文化が根付いている

「これはこうしろ」「それはダメ、こう直せ」のような指示・命令が日常的に飛び交う職場では、従業員の“考える力”が育ちません。自分の意見を言っても否定される、あるいは取り合ってもらえない経験が積み重なると、次第に自ら動こうという気持ちは薄れていきます。

その結果、「やらされているだけ」という感覚が強くなり、働くこと自体に意味を見いだせなくなってしまうのです。特に今の時代、若い世代は「対等なコミュニケーション」や「意見を尊重してくれる環境」を強く求めています。自分の存在やアイデアが受け入れられないと感じた瞬間に、「ここでは成長できない」と見切りをつけ、別の職場を探し始めるケースは非常に多いです。

フィードバックや感謝の言葉がない職場環境

人は誰しも、誰かに認められることでモチベーションが高まります。「自分の仕事が会社に貢献している」「誰かの役に立っている」と実感できるからこそ、次も頑張ろうと思えるのです。

ところが、スタッフの仕事に対して何のフィードバックもなく、感謝や称賛の言葉もかけられないような職場では、スタッフは次第に“空気のような存在”と感じてしまいます。「どうせやっても評価されない」「いてもいなくても変わらないんだろうな」と思った瞬間に、心は離れはじめるでしょう。

大げさな表彰やインセンティブでなくてもかまいません。日々の中で「ありがとう」「助かったよ」「おかげでスムーズに進んだよ」たったこれだけの言葉が、社員のやる気を引き出す強力なスイッチになるのです。

成長の機会がない、毎日が“変わらない日常”である

仕事において、成長の実感を持てないというのは、意外と大きなストレスです。
特に20代〜30代の若手社員は、「今の仕事を通して、どんなスキルが身につくのか」「自分が将来どうなれるのか」という視点を重視する傾向にあります。

それにもかかわらず、単純作業の繰り返しで刺激がなく、何年働いても変化のない環境では、「このままで本当にいいのだろうか?」という漠然とした不安が生まれます。こうした不安が積み重なると、「もっと成長できる職場があるかもしれない」と考え始め、転職へとつながっていくのです。

逆に、仕事の中に小さなチャレンジや新しい学びの機会があれば、人は自らの成長に喜びを感じ、前向きに取り組むようになります。仕事そのものが自己成長の場として機能すれば、定着率は確実に向上します。


スタッフが定着する職場に共通すること

反対に、スタッフが長く働き続ける職場には、どのような共通点があるのでしょうか?

離職率の低い会社を観察すると、そこには一貫した“人を大切にする文化”が存在しています。給与や待遇といった表面的な条件だけでなく、もっと深いレベルでの「安心感」「承認」「成長実感」が支えになっているのです。

ここでは、スタッフの定着率が高い会社に共通する“本質的な特徴”を3つご紹介します。どれも派手な制度ではなく、むしろ日常の中にある“ちょっとした心配り”が、大きな違いを生んでいることがわかります。

「小さな成功体験」を積ませて自己肯定感を育てている

人が「この仕事、続けてみたい」と思うのは、どんな瞬間でしょうか?答えはシンプルで、「自分にもできた」「役に立てた」という“実感”が得られたときです。特に新しく入社したばかりのスタッフにとっては、この小さな成功体験こそが、仕事を続けるかどうかを左右する大きな要因になります。

多くの人は、新しい職場で最初から全力を出せるわけではありません。緊張や不安の中で手探り状態が続くからこそ、初期段階で「達成感を味わえるタスク」を任されることで、自信と前向きな気持ちが芽生えていきます。

たとえば、「この資料の整理をお願い」といった単純な仕事であっても、上司から「すごく助かったよ」「丁寧にやってくれてありがとう」と声をかけてもらえれば、それは確実に“成功体験”となります。
このような積み重ねによって、「もっと頑張ってみよう」「次はこれもできるかもしれない」と、自発的な意欲が育まれていくのです。

スタッフのやる気や継続意欲は、日々の“ちょっとした達成”の上に築かれていきます。小さな成功体験を意図的に設計している企業は、それだけで定着力の高い組織文化をつくっているといえるでしょう。

経営者や上司が「あなたを見ている」というメッセージを届けている

どれほど制度が整っていても、職場で「私はここに必要とされているのか?」という不安を感じるようでは、人は長く居続けることができません。だからこそ、経営者や上司の“見守る姿勢”は極めて重要な意味を持ちます。

「ちゃんと見てくれている」
「努力していることをわかってくれている」
この安心感があるかどうかで、スタッフの気持ちは大きく変わります。

実際に、スタッフが長く勤めている会社を訪れると、経営者や管理職が積極的に現場に顔を出し、スタッフの名前を覚え、日常的に声をかけています。
「最近どう?」「何か困ってることない?」といった、ちょっとしたやり取りが、スタッフにとっては「自分は一人じゃない」「この職場には自分を気にかけてくれる人がいる」という信頼の土台になります。

逆に、上司が常に忙しそうにしていて、スタッフと目を合わせない、話もしないという状況では、不安や孤立感が生まれ、やがてその職場から離れてしまうことになります。「人は見られていると感じることで、安心とやる気を持つ」。この原則を忘れず、日々の接し方を丁寧にすることが、定着率向上に直結します。

チャレンジが歓迎される文化を育てている

人が仕事に魅力を感じるとき、その背景には「自分の可能性を広げられる」という希望があります。
特に、今の若い世代は「ただの労働力」ではなく、「自分らしさを活かせる場所」を求めている傾向が顕著です。
だからこそ、スタッフのチャレンジ精神を大切にし、それを応援する職場には、自然と“前向きな空気”が生まれます。

「これ、ちょっとやってみたいです」
「このやり方、もっとよくできると思うんですけど…」

こうした提案や前向きな行動に対して、「無理だからやめとけ」「余計なことはするな」と蓋をするのではなく、「まずやってみよう」「いいね、それ面白いね」と受け入れる姿勢を持ちましょう。たとえ失敗しても、「チャレンジしたこと」をきちんと評価する文化を持つことで、スタッフは“やりがい”を感じ、自発的に働くようになります。

さらに、挑戦が奨励される環境では、「誰かの成功」を素直に称賛し合える空気も育ちます。この“相互承認”の文化は、働き手同士の関係性も良好にし、「この職場にいたい」という気持ちをさらに強くさせます。


スタッフの機嫌をとること=定着ではない

最近、経営者の方からよく耳にする言葉があります。「スタッフに辞められたくないから、できるだけ機嫌を損ねないように気を遣っている」というものです。

一見すると、スタッフ思いの素晴らしい姿勢に見えるかもしれません。確かに、スタッフとの信頼関係を築くことは組織づくりの基本です。しかし、「機嫌をとること=信頼関係の構築」と勘違いしてしまうと、かえって逆効果になりかねないのです。

“ご機嫌取り”のマネジメントは、スタッフの成長機会を奪う

スタッフの機嫌をとるマネジメントは、一時的には職場の空気を和らげるかもしれませんが、長期的に見ると、会社にとってもスタッフ本人にとっても不健全な状態を生み出します。
なぜなら、「怒らせないようにする」「不満を言われないようにする」といった経営判断は、あくまで“受け身”の対応だからです。

「これをやったら嫌がるかも…」
「文句を言われたら面倒だから言わないでおこう…」

そうやってスタッフに合わせすぎると、次第に注意すべき場面でも何も言えなくなります。結果として、仕事の質が落ちたり、組織の規律が崩れたりする事態にもつながります。

経営者がスタッフに過度に迎合してしまうと、スタッフ自身も「自分が評価されているのは実力ではなく、ただ“機嫌が良いから”なんだ」と無意識のうちに感じてしまいます。これはモチベーションの低下を招くだけでなく、「この会社では本気で成長はできない」と見切りをつけられる原因にもなるのです。

本当に必要なのは、“心地よさ”ではなく“やりがいと成長実感”

スタッフが長く働きたいと思う会社には、共通して「やりがい」と「自己成長の実感」があります。「この職場は、ただ居心地がいいから残っている」という理由では、スタッフはいつか離れていきます。“居心地”は状況によって変わるからです。新しい職場やより楽な環境が見つかれば、簡単に移ってしまいます。

それに対して、「この会社では、自分が必要とされている」「ここで働いていることで、スキルも人間性も確実に磨かれている」とスタッフ自身が感じられる職場は、簡単には離れられません。、その仕事自体に“意味”や“成長の軌跡”を見いだしているからです。

経営者として必要なのは、スタッフを“満足させる”ことではなく、“成長させる”ことです。
そのためには、スタッフの要望をすべて聞くのではなく、「時には耳の痛いこともきちんと伝える」「チャレンジの場を用意する」「責任ある仕事を任せる」ことが重要なのです。

定着は「ぬるま湯」ではなく、「挑戦と支援」の中に生まれる

会社にとっての理想的な定着とは、ただ“辞めない人が多い”という意味ではありません。本質的な定着とは、「この職場で働くことに誇りを持ち、自ら学び、チャレンジし、貢献しようとする人材が自然と残っていく状態」です。

つまり、“ぬるま湯”のように居心地がいいだけの職場では、やがてスタッフは退屈し、「自分が成長できる場所ではない」と感じて去っていきます。逆に、程よい緊張感と挑戦機会があり、同時に支援してくれる上司がいる職場では、スタッフは成長を実感しながら「ここに居続けたい」と思えるようになります。

経営者が意識すべきなのは、「嫌われないこと」ではなく、「信頼されること」です。信頼とは、スタッフにとって都合のいい存在になることではなく、「この人は本気で自分の成長を考えてくれている」「厳しいことも言ってくれるけど、それは自分のためだ」と思ってもらえる関係性のことです。

まとめ:人の“心”を動かす職場づくりが定着の鍵

「スタッフが定着しないのは給与が関係しているのか?」という問いに対して、答えは「一因ではあるが、それがすべてではない」ということです。給与だけを上げても、根本的な人間関係や成長機会の不足、やりがいの欠如などがあれば、離職は防げません。だからこそ、スタッフ一人ひとりの「体験価値」をいかに高めるかが、経営者の手腕にかかっているのです。

スタッフの機嫌をとることに力を注ぐよりも、「スタッフの未来を本気で考える」ことにエネルギーを使ってみてください。時には厳しくても、真剣に向き合い、挑戦の場を与え、努力を正当に評価する。そうした“本質的な優しさ”こそが、信頼と定着につながります。

表面的な“ご機嫌取り”ではなく、“信頼と成長をベースにした関係性”を築くこと。
それこそが、経営者として本当に目指すべき“スタッフ定着”のあり方なのです。

監修者情報

経営コンサルタント|翔彩サポート

【経営分析×経営アドバイス×財務管理】による永続的に繁栄する経営体制を支援。

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